社内の申請・承認業務に手間がかかっていませんか?稟議書が埋もれたり、Excel で管理している申請一覧の更新が追いつかなかったりと、アナログな運用から抜け出せずに悩んでいる企業は少なくありません。
そうした課題を解決する手段として注目されているのが、SharePoint を活用したワークフローの自動化です。 本記事では、SharePoint ワークフローの仕組みから具体的な事例、導入時に失敗しないためのポイントを解説します。
●この記事の目次
SharePoint のワークフロー機能を検討するうえで、まず知っておきたいのは「現在の主流構成は Power Automate との連携を前提にしている」という点です。SharePoint 単体の機能だけではなく、Microsoft 365 のツールをうまく組み合わせることで、実用的な業務自動化が実現します。
SharePoint の導入のメリット・デメリットについては、下記の記事を併せてご覧ください。
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SharePoint は、ドキュメント管理やリスト管理を軸にした情報共有プラットフォームとなります。この SharePoint に情報が登録・更新されたタイミングをトリガーとして、Power Automate が自動的にフローを起動する仕組みが現在の主流です。
たとえば、申請者が SharePoint のリストにデータを入力すると、自動的に承認者へ通知メールが届き、承認・却下の結果が申請者に返ってくる、という一連の流れをノーコードで構築できる仕組みです。担当者が手動でメールを送ったり、進捗を個別に確認したりする手間が大幅に削減されます。
以前は SharePoint Designer や InfoPath を使ってワークフローを構築するケースが多くありましたが、現在はこれらの旧来ツールではなく、Power Automate を使った連携構成が主流です。
InfoPath は SharePoint Online で 2026 年 7 月 14 日に廃止予定であり、SharePoint Designer も非推奨・移行対象として扱うのが適切といえます。Microsoft が現在推奨しているのは、Power Automate を用いた新しい構築方法です。
Power Automate は SharePoint と深く統合されており、100 以上のテンプレートが用意されているため、専門的なプログラミング知識がなくてもワークフローを構築しやすいとされています。旧来の SharePoint Designer と比較すると、UI が直感的で扱いやすく、Teams・Outlook・外部サービスとの連携も容易なため、より幅広い業務に対応できるのが特徴です。
SharePoint と Power Automate を組み合わせることで、申請内容の保管・承認プロセスの実行・完了後の通知という一連の流れを一つの環境に集約できます。承認者は Teams やメール通知を通じて承認・却下を行え、申請内容と承認履歴は SharePoint のリストや承認履歴として管理できることがメリットです。
「誰がどの申請を承認したか」「いつ完了したか」といった記録が自動的に残るため、後から内容を確認したい場面でも迅速に対応可能です。コンプライアンス上のエビデンス管理としても有効に機能するのです。
SharePoint を活用したワークフローが近年注目を集めているのには、多くの企業が日常業務の中で共通の悩みを抱えているという背景があります。「メールで申請を送ったが埋もれてしまう」「Excel の申請一覧がいつの間にか古くなっている」「口頭で依頼したタスクが漏れていた」といった問題は、アナログな運用体制を続ける限り解消されません。
手動で申請・承認を行う運用では、担当者が変わると手順がわからなくなったり、特定の人しか対応できない業務が生まれたりします。SharePoint のワークフローを活用することで、業務の流れがフロー上に明文化されるため、誰が担当しても同じプロセスで業務を進められるようになることがメリットです。
ベテラン社員の経験に頼っていた申請対応や、担当者ごとに異なるやり方で処理されていた承認業務を標準化できるため、組織全体のナレッジとして定着させやすくなります。
「Excel で申請一覧を管理しているが、複数人が同時に更新して最新版がわからなくなる」「承認が完了したのに Excel の更新を忘れて二重対応が発生した」というような現場で起きるミスは、Excel やメールによる管理の限界を示しています。
SharePoint のリストを活用することで、申請内容が入力された瞬間から自動的にフローが起動し、承認後の状態更新も自動で行うことができます。手動による Excel 更新の漏れや、メール対応の見落としといったヒューマンエラーを構造的に防ぐことが可能となるのです。
SharePoint は Microsoft 365 のエコシステムの中核にあり、Teams・Outlook・Power Automate・Power Apps との連携が強みです。承認依頼を Teams に届け、Outlook から承認操作を行い、結果を SharePoint に記録するといった一連の流れが、追加費用なく標準機能で実現できます。
すでに Microsoft 365 を導入している企業であれば、既存環境を活用してワークフローの自動化を始めやすいため、導入ハードルが比較的低いことも普及が進んでいる理由の一つです。
※利用する機能や接続先によっては追加ライセンスが必要になる場合があります。
ここからは、実際に現場で活用されている SharePoint ワークフローの具体的な事例を紹介します。それぞれ導入前にどんな問題があったか・導入後にどう解決したかという点も解説しますので、自社の業務と照らし合わせながら参考にしてください。
稟議書を Excel で作成してメールに添付し、複数の承認者に順番に転送していたため、誰の手元で止まっているのかが把握できない状況。催促のメールが頻発し、承認完了まで数日かかることも珍しくない状況も散見されていた。
SharePoint のリストに稟議内容を入力すると、Power Automate が自動的に承認依頼を送付し、承認者は Teams や Outlook からそのまま承認・却下を操作できるように。差し戻し・再申請の流れも自動化されており、申請者は常にステータスをリアルタイムで確認・承認履歴も自動で記録されるため、コンプライアンス対応としても有効に機能。
経費精算の申請書を紙で提出し、上長の承認印をもらって経理部門に届けるという流れが続いていたため、申請のたびに時間と手間がかかっていたケース。テレワーク環境では物理的な押印のために出社が必要になるケースもあり、非効率であった。
SharePoint のフォームから金額・用途・領収書の画像を入力すると、承認ルートに沿って自動的に申請が回覧される仕組みを活用。上長が Teams 上で承認操作を完了すると、経理担当者に自動通知が届き、申請内容は SharePoint のリストに記録される。ペーパーレスと業務スピードの両立を同時に達成した代表的な活用事例の一つ。
契約書の承認フローが部門によってバラバラで、法務・経営陣・担当者の確認順序や承認方法が統一されていない状況。どのバージョンの文書が最終版なのか、ライブラリ上でも判別が難しい状態であった。
契約書を SharePoint のライブラリに保存すると、Power Automate が定められた承認ルートに沿って順次確認依頼を送付。各承認者がコメントを付けて承認すると次のステップへ自動的に進み、最終承認後には必要に応じて編集制限をかけたり、承認済みの状態で版管理を行ったりできるようになり、全社共通の承認プロセスが標準化へ。
プロジェクトのタスクを Excel で管理していたが、担当者が更新を忘れて進捗が不明になることが多く、リーダーが毎回メンバーに個別で確認する手間が発生。締め切り間近になって初めて遅延が判明するケースも頻発。
SharePoint のリストにタスクを登録し、期日が近づくと担当者に Teams で自動リマインドが届く仕組みを構築。ステータスが変わると関係者全員に進捗が通知され、リーダーは一覧画面で全体の状況を把握することが可能に。個別の確認メールが不要になり、コミュニケーションコストが大幅に削減。
総務や情報システム部門への社内問い合わせがメール・チャット・電話と複数チャネルに分散しており、対応状況が担当者個人で管理されていた状況。問い合わせが重複したり、対応漏れが発生したりするケースが後を絶たなかった。
Microsoft Forms で問い合わせを受け付け、内容を SharePoint のリストに自動登録する仕組みを導入。カテゴリに応じて担当者が自動振り分けされ、対応状況がリスト上で一元管理されているため、手間や無駄な時間の削減が可能に。対応完了後は申請者に自動通知が届くため、「対応したかどうか」の確認連絡も不要になった。
入社・退社・異動に伴う手続き依頼がメール・チャット・口頭とバラバラで届いており、総務・情報システム部門・各部署への連絡漏れが多発。誰が何の手続きを担当しているか把握できず、抜け漏れが繰り返されていた事例。
入退社・異動の情報を Microsoft Forms のフォームから一元的に受け付け、SharePoint のリストに登録する運用に変更。登録内容に応じて Power Automate が担当部署に自動で振り分け通知を送付し、各部署の対応状況もリスト上で可視化。連絡の取りこぼしや対応漏れが構造的に防止できるメリットを感じられる事例。
SharePoint ワークフローを導入することで得られるメリットは、単なる作業時間の短縮にとどまりません。業務の構造そのものを変えることで、組織全体の生産性と業務品質を底上げする効果が期待できます。
特定の担当者が退職・異動すると業務が止まってしまう「属人化リスク」は、多くの企業で深刻な問題です。SharePoint ワークフローを導入することで、業務の手順がシステム上に定義されるため、担当者が変わっても同じプロセスで業務が継続できます。
手動で管理していた申請対応や通知業務は、どれだけ注意していてもヒューマンエラーが発生します。SharePoint ワークフローでは、フローのトリガー・承認依頼の送付・完了通知がすべて自動化されるため、「送り忘れ」「確認忘れ」といったミスを構造的になくすことが可能です。業務の精度が高まるとともに、担当者の心理的負担も軽減されます。
SharePoint ワークフローを運用すると、申請・承認のすべての状態がリスト上に記録されます。承認待ちや滞留状況が一覧画面で即座に確認できるため、上長やマネージャーが承認の詰まりに気づいて迅速に対応できます。
承認依頼の送付・ステータスの更新・完了通知といった反復作業が自動化されることで、担当者が本来の業務に集中できる時間を生み出すことが可能です。メールの下書きや転送、Excel への手入力といった付帯作業がなくなるだけで、一件あたりの処理時間が大幅に削減されます。積み重なれば組織全体での工数削減という大きな効果につながるでしょう。
SharePoint ワークフローは有効なツールですが、導入の進め方を誤ると「結局誰も使わなかった」という失敗に終わるケースもあります。成功させるためには、設計・運用・改善の各フェーズでいくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
ワークフローを構築する前に、現在のワークフローを図式化して整理することが重要です。「どこで時間がかかっているか」「どこでミスが発生しているか」を明確にしないまま自動化を進めると、課題のない部分を自動化して効果が出なかったり、問題のある部分がそのまま残ったりという結果になります。
現行の業務プロセスを棚卸しして、自動化の効果が出やすい箇所を特定することが出発点です。現状把握のための時間を惜しまないことが、後の成功を大きく左右します。
初期設計の段階で「例外処理もすべてシステムで対応したい」と考えてフローを複雑化させてしまうと、現場が扱いきれずに誰も使わなくなるという失敗に陥りがちです。まずは主要なワークフローをシンプルに自動化し、例外対応は最小限に留めることが大切です。
複雑な条件分岐や特殊ケースへの対応は、運用を通じて必要性が確認されてから段階的に追加する流れが、定着率を高めるうえで効果的です。
承認依頼や進捗通知をすべての関係者に送りすぎると、「通知が多すぎて重要なものを見落とす」という逆効果を招きます。「誰に」「どのタイミングで」「どの情報を」通知するかを設計段階で丁寧に絞り込むことが必要です。
通知の量がストレスになり、関係者がフローを無視するようになってしまうと、ワークフロー自体の形骸化につながりかねません。受け取る側の立場に立った通知設計を心がけましょう。
ワークフローを構築して終わりではなく、運用開始後に定期的に見直す仕組みを作ることが重要です。「このステップは不要だった」「この通知は別の担当者にも送りたい」といった現場からのフィードバックを吸い上げて改善を続けることで、ワークフローが実務に馴染んでいきます。
改善担当者を明確にし、定期的なレビューをルール化しておくことが長期的な定着につながるでしょう。
SharePoint ワークフローを導入する際は、一度に大規模な構築を目指すのではなく、「小さく始めて確実に広げる」アプローチが成功への近道です。以下の 4 ステップで段階的に進めることをおすすめします。
まず、自動化の効果が出やすい業務を洗い出します。毎月決まった手順で繰り返される定型業務や、申請・承認のように流れがあらかじめ決まっている業務が最適な対象です。現行のワークフローをドキュメント化して、どこに時間がかかっているか・どこでミスが起きやすいかを可視化することで、自動化の優先順位が明確になります。
対象業務が決まったら、まず一つのフローだけを対象に試験的に導入します。最初から複数の業務を一気に自動化しようとすると、設計の複雑さや現場への展開コストが増大してしまいます。一部門・一業務に限定してスモールスタートし、運用から得られた知見を次の展開に活かすサイクルが効果的です。
試験対象が決まったら、Power Automate を使ってフローを構築します。SharePoint リストへの登録をトリガーにして承認依頼を送信し、承認・却下の結果に応じてリストのステータスを更新し、完了通知を申請者に送るというのが基本的な構成です。Power Automate はドラッグ操作でフローを組み立てられるため、プログラミング知識がない担当者でも基本的なフローは構築できます。
フローが完成したら、実際の業務データを使って動作確認を行います。承認ルートが正しく機能するか、通知が適切なタイミングで届くか、エラー時の挙動はどうかを確認してから本番運用に移行しましょう。試験導入で積み上げたノウハウをもとに他部門・他業務へ横展開することで、組織全体の業務効率化を着実に進めることができます。
SharePoint ワークフローは、自社の環境や業務の特性と照らし合わせて、導入効果が高いかどうかを判断することが大切です。以下のような特徴を持つ企業では、特に高い効果が期待できます。
稟議・経費精算・休暇申請・購買依頼など、日常的に申請・承認業務が発生する企業は、SharePoint ワークフローの恩恵を最も受けやすい組織といえます。承認フローの自動化によって処理速度が上がり、記録が自動で蓄積されるため、コンプライアンス対応の観点でも有効に機能します。
複数部署をまたぐ申請や、情報を横断的に共有する必要がある業務では、メールや口頭での連絡が非効率になりがちです。SharePoint のリストと Power Automate を組み合わせることで、部門をまたいだ情報伝達と承認フローを自動化でき、部署間の連携ミスや処理の遅延を大幅に減らすことができます。
すでに Microsoft 365 のライセンスを保有している企業であれば、追加コストをほとんどかけずに SharePoint ワークフローを始めることができます。たとえば承認依頼が Teams のチャットに届き、担当者が Teams 上でそのまま承認操作を行い、承認後の通知が Outlook メールで届くという一連の流れが、日常的に使い慣れたツールの中で完結します。新しいシステムに慣れるための学習コストを最小化できる点も、大きな強みです。
一度に大規模なシステム刷新を行うのではなく、現行の業務に影響を与えながら少しずつデジタル化を進めたいという企業にとって、SharePoint ワークフローはその第一歩として最適です。ノーコード・ローコードで始められるため、IT専任者がいない企業でも現場主導での導入が可能であり、DX 推進の足がかりとして機能します。
SharePoint ワークフローの導入を検討する際、多くの担当者が具体的な活用方法や制約について疑問を抱きます。どの業務から始めるべきか、ノーコードでどこまで対応できるのか、既存システムとの連携可否や Power Automate との違いなど、導入前に押さえておきたいポイントを整理して解説します。
まずは申請・承認フローなど定型業務から導入するのが最適です。業務の流れがあらかじめ決まっており、自動化しやすく、効果も実感しやすいためです。経費精算や稟議申請など「毎回同じ手順で処理される業務」から着手することで、現場への定着もスムーズになります。慣れてきたら、タスク管理や問い合わせ対応など、より複雑なフローへと対象を広げていくのが着実なアプローチです。
基本的なワークフローは、ほぼノーコードで構築できます。Power Automate を使えば、承認・通知・条件分岐などの設定もドラッグ操作で実現可能です。多くの現場で必要とされる「申請→承認→通知→記録」という一連の流れは、テンプレートを活用して比較的短時間で構築できます。
ただし、複雑な外部システムとの連携や独自のビジネスロジックが必要な場合は、一部カスタマイズや設計スキルが求められることもあります。まずはシンプルな構成から始めることが、挫折しないためのコツです。
Power Automate には多数のコネクタが用意されており、Microsoft 365 内のツールはもちろん、外部サービスとも接続できます。承認後に会計システムへデータを連携したり、通知を Teams やメールで送ったりする運用も実現可能です。
ただし、接続先のシステムによっては専用のコネクタが必要になったり、プレミアムライセンスが求められたりするケースもあります。事前に対応するコネクタの有無を確認しておくことが重要です。
SharePoint のリスト機能を起点にした簡易的な運用は可能ですが、実務で使う承認フローや条件分岐、外部サービスとの連携は Power Automate を組み合わせて構築するのが一般的です。Power Automate を組み合わせることで、承認ルートの多段階分岐・差し戻し処理・外部システムへのデータ連携など、実務レベルの本格的なワークフローを構築することが可能です。
現在Microsoftが推奨しているのはPower Automateとの連携構成であり、SharePoint単体での旧来のワークフロー機能は段階的に廃止される方向にあります。今から新規でワークフローを導入するのであれば、Power Automateを前提とした構成で始めることがおすすめです。
ワークフローの作成手順やエラーの対処法は、下記の記事を併せてご覧ください。
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SharePoint ワークフローの基本的な仕組みから、稟議承認・経費精算・入退社手続きなど 6 つの具体的な活用事例、導入で失敗しないためのポイント、スモールスタートの手順まで幅広く解説しました。Power Automate との連携が現在の主流であり、定型業務から始めて段階的に展開することが成功のカギになります。
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