SharePoint アドイン廃止の理由と安全な対応方法を解説!
SharePoint Online を利用している企業にとって重大な変更が迫っています。SharePoint アドインモデルが 2026 年 4 月 2 日に完全廃止され、その後は使用できなくなります。この変更は企業の情報システムに大きな影響を与える可能性があるため、事前の準備と対策が必要です。
本記事では、廃止の背景から代替策、具体的な移行手順まで詳しく解説し、企業が安全に移行できるよう支援します。
●この記事の目次
- そもそも SharePoint アドインってどんな仕組み?
1-1. SharePoint アドインとは?
1-2. どんな場面で使われてきたのか - なぜ SharePoint アドインが廃止されるの?
2-1. Microsoft が廃止を決めた背景
2-2. 代わりに何を使えばいいのか(SPFx の存在) - SharePoint アドインの廃止でどんな影響があるのかを解説!
3-1. 既存のカスタムアプリやワークフローが使えなくなる
3-2.アプリカタログからのアドイン追加・更新ができなくなる
3−2. Azure ACS 認証を使った外部連携システムが動作停止する
3-3.プロバイダーホスト型アプリの認証エラーが発生する - 代替策の SPFx とは?わかりやすく比較!
4-1. SPFx とは
4-2.アドインと SPFx の違い - SharePoint アドイン廃止に向けてどう準備すればいい?移行の進め方を解説!
5-1.まずは今の状況を整理しよう
5-2.移行のスケジュールと進め方のコツ - SharePoint の移行・保守はSGプラスにお任せ!
そもそも SharePoint アドインってどんな仕組み?
SharePoint アドインの廃止について理解するためには、まずアドインがどのような技術であり、どのような目的で使われてきたかを知る必要があります。SharePoint アドインは長年にわたって企業のビジネス要件を実現するための重要な開発手法でした。
特に、標準機能では対応できない複雑な業務要件や独自のワークフローを実装する際に、多くの企業が採用してきた実績のある技術です。
SharePoint アドインとは?
SharePoint アドインは、SharePoint 2013 から導入された開発モデルです。SharePoint 2013 から、それまでのファーム ソリューションやサンドボックス ソリューションを補完する形で、新しい開発手法としてSharePoint アドイン(当時は SharePoint アプリと言っていました)が誕生しました。このアドインモデルは、従来の開発手法と比べてセキュリティ面で大きな改善を実現しています。
ただし、アプリ専用のアクセス許可(App-only permissions)は、強力な操作が可能であるため、設計・運用上の注意も必要です。
従来のソリューション開発では、開発したアプリケーションが SharePoint 環境に対して非常に強い権限を持ってしまい、セキュリティ上のリスクが懸念されていました。しかし、SharePoint アドインでは、アプリに必要なアクセス許可を明確に指定できるため、制限された権限の範囲内でアプリケーションを動作させることが可能です。
また、SharePoint アドインの認証/承認には、SharePoint Online では主に Azure ACS を使った OAuth の仕組みが用いられており、オンプレミス環境でも適切な構成により同様の認証モデルを利用することができます。
どんな場面で使われてきたのか
SharePointアドインは、企業の様々なビジネスシーンで活用されてきました。主な利用場面として、ページ上に埋め込む「アドイン パーツ(旧カスタム Web パーツに相当)」の作成、独自の業務ロジックや通知処理を含む「ワークフロー的な動作の実装」、外部システムとの連携などが挙げられます。特に、標準機能では実現できない独自の業務要件を満たすために重要な役割を果たしていました。
例えば、社内の既存システムとSharePointを連携させるアプリケーションや、業務プロセスに特化したカスタムワークフロー、専用のデータ表示・編集機能などです。これらのアドインは、企業の生産性向上や業務効率化に大きく貢献してきました。また、SharePointアドインは REST APIと組み合わせることで、.NET以外のプログラミング言語でも開発できるようになり、開発の柔軟性も向上していました。
なぜ SharePoint アドインが廃止されるの?
SharePointアドインの廃止は突然決定されたものではありません。Microsoft は数年にわたり SharePoint Framework (SPFx) への移行を推奨しており、廃止は段階的に進められてきました。Microsoftの戦略的な方向転換と技術的な進歩が背景にあり、SPFx はモダン UI、TypeScript、React をベースにした開発モデルであり、クラウドと連携しやすい構造になっています。
この決定は、クラウドファーストの時代において、セキュリティとパフォーマンスの両面で優れた技術への移行を加速させる重要な転換点となっています。
Microsoft が廃止を決めた背景
Microsoft がアドインモデルの廃止を決定した最大の理由は、技術の古さとセキュリティ上の懸念です。SharePoint 2013 以降のオンプレミスでのソリューション開発に SharePoint アドイン開発が登場しましたが、クラシックサイトの時代の話。
そこからクラウド環境はめまぐるしく変化を遂げました。SharePoint アドインが依存する Azure ACS も同時に廃止が決定されており、これらの技術は現代のクラウドセキュリティ要件に適合していません。
また、SharePoint アドイン モデルは現在でも SharePoint Online でサポートされていますが、モデルとパターンは古く、使用することはお勧めしませんと Microsoft が公式に表明しているように、同社はより新しい開発手法への移行を強く推奨しています。現代のクラウドファースト環境では、Azure AD を基盤とした認証システムが標準となっており、古い ACS 認証システムは技術的負債となっていました。
代わりに何を使えばいいのか(SPFx の存在)
SharePoint アドインの代替として、Microsoft が強く推奨しているのが SharePoint Framework(SPFx)です。SPFx は、開発者に推奨される SharePoint のカスタマイズおよび拡張モデルです。SPFx は 2017 年に登場した比較的新しい開発フレームワークで、現代的な Web 技術を基盤としています。
SPFx の大きな特徴は、SharePoint Online だけでなく Microsoft Teams や Microsoft Viva Connections でも同じコードを利用できることです。SharePoint Online、Microsoft Teams、Microsoft Viva Connections の緊密な統合により、開発者は SPFx を使用して、これらの製品をすべてカスタマイズして拡張することもできます。つまり、一度開発したアプリケーションを複数の Microsoft 365 サービスで活用できるため、開発効率が大幅に向上します。
ただし、SPFx は主にクライアントサイド開発を対象としており、サーバー側で動作する一部のアドイン機能(特にカスタム Web API を介する処理など)は、Power Platform や Azure Functions など他のクラウド技術と併用して補完する必要があります。
SharePoint アドインの廃止でどんな影響があるのかを解説!
SharePoint アドインの廃止は、多くの企業に深刻な影響をもたらします。特に、長年にわたってアドインを活用してきた組織では、業務の継続性に関わる重要な問題となります。
影響の範囲は技術的な側面だけでなく、日常業務や経営戦略にまで及ぶため、企業は包括的な対応策を検討する必要があります。
既存のカスタムアプリやワークフローが使えなくなる
最も深刻な影響は、現在稼働中のカスタムアプリケーションやワークフローが完全に停止することです。2026 年 4 月 2 日まではテナントのアプリカタログの使用はサポートされるため、サードパーティは引き続き SharePoint アドインを提供できますが、この期限以降は、アプリカタログ経由でのアドインの追加・更新が完全に無効化され、既存のアドインも動作が保証されなくなります。
企業が長年の投資により構築してきた業務システムが一斉に使用不可能になるため、代替手段を用意しなければ業務が停止する可能性があります。特に、売上管理、顧客管理、プロジェクト管理などの基幹業務で利用されているアドインについては、事前の移行計画が必須です。また、これらのアドインに依存している業務プロセスの見直しも必要になります。
アプリカタログからのアドイン追加・更新ができなくなる
2024 年 3 月 1 日をもって、Microsoft はパブリックマーケット プレイス(ストア)への新しい SharePoint アドインの登録を受け付けなくなりましたっています。2024 年 7 月 1 日以降はパブリックマーケット プレイス(ストア) から SharePoint アドインを取得できません。この変更により、新しいアドインの導入や既存アドインのアップデートが段階的に制限されています。
企業の IT 部門では、必要なアドインの棚卸しを行い、どのアドインが業務に不可欠かを早急に判断する必要があります。また、ベンダーから提供されているサードパーティ製のアドインについても、代替ソリューションの検討を始めなければなりません。アプリカタログの制限により、セキュリティアップデートも受けられなくなるため、セキュリティリスクも高まります。
Azure ACS 認証を使った外部連携システムが動作停止する
SharePoint アドインと同時に廃止される Azure ACS(Access Control Services)の影響も深刻です。2024 年 11 月 1 日をもって新規テナントでは Azure ACS の利用が停止され、2026 年 4 月 2 日をもって既存テナントでの利用が停止されて完全に廃止されることになります。
ACS 認証を利用している外部システムとの連携機能は、認証基盤の変更により完全に動作しなくなります。これは、ERP システム、CRM システム、その他のエンタープライズアプリケーションと SharePoint を連携させている企業にとって重大な問題ですとなります。代替手段として、Azure AD ベースの認証システムへの移行が必要になりますが、これには相応の技術的な対応と時間が必要です。
プロバイダーホスト型アプリの認証エラーが発生する
プロバイダーホスト型 SharePoint アプリは、外部の Web サーバーでホストされているアプリケーションで、Azure ACS 認証に依存しています。一部のプロバイダーホスト型アプリは、Entra ID を使った OAuth 認証(サーバー側トークン処理)へ移行することで継続利用が可能なケースもあります。ただし、既存アーキテクチャに大幅な変更が必要となる可能性が高く、実質的な再設計が必要となります。
これらのアプリケーションでは、認証エラーが発生してユーザーがアクセスできません。特に、企業が独自に開発した業務アプリケーションや、外部ベンダーが提供するSaaS ソリューションの一部として実装されているアプリケーションでは、サービス全体の可用性に影響を与える可能性があります。早期の認証基盤変更が必要です。
代替策の SPFx とは?わかりやすく比較!
SharePoint アドインの代替となる SPFx について、その特徴と従来のアドインモデルとの違いを詳しく解説します。SPFx は現代的な開発手法を採用しており、企業にとって多くのメリットをもたらすのです。
また、単なる代替技術ではなく、Microsoft 365 エコシステム全体での活用を前提とした次世代の開発プラットフォームとして位置づけられています。
SPFx とは
SharePoint Framework (SPFx) は、クライアント側の SharePoint 開発、SharePoint データとの簡単な統合、Microsoft Teams の拡張を完全にサポートするページおよび Web パーツ モデルです。SPFx は JavaScript / TypeScript ベースの開発フレームワークで、現代的な Web 開発技術を活用しています。
SPFx の最大の特徴は、クライアントサイド開発に特化していることです。SharePoint フレームワーク は JavaScript ベースの開発フレームワークです。この仕組みの導入により、管理者がスクリプトを把握できるようになり、アプリのライフサイクルも含めた管理が可能になりました。これにより、セキュリティ面での管理が向上し、従来のスクリプトエディタ Web パーツで発生していた管理上の問題が解決されています。
開発技術としては、TypeScript、React、Node.js などのオープンソース技術を活用しており、Visual Studio Code などの軽量なエディタでも開発が可能です。このため、従来の Visual Studio ベースの開発環境に比べて、より柔軟で効率的な開発が実現できます。
アドインと SPFx の違い
SharePoint アドインと SPFx の最も大きな違いは、技術アーキテクチャとサポート範囲です。アドインはサーバーサイド処理を含む複雑なアーキテクチャを持っていましたが、SPFx は完全にクライアントサイドで動作します。これにより、パフォーマンスの向上とセキュリティの強化が実現します。
デプロイメントの観点では、アドインは専用のアプリカタログやマーケットプレイスに依存していましたが、SPFx はより柔軟な配布方法をサポートしています。また、開発・テスト環境の構築も大幅に簡素化されており、ローカルでの開発とテストが容易になっています。
最も重要な違いは対応プラットフォームの範囲です。SharePoint アドインは SharePoint でのみ動作しましたが、SPFx で開発したソリューションは SharePoint Online、Microsoft Teams、Microsoft Viva Connections で共通して利用できます。これにより、一度の開発でマルチプラットフォーム展開が可能になり、開発コストと保守コストの削減が実現しますできます。認証についても、SPFx は最新の Azure AD 認証を使用するため、セキュリティ面でも優位性があります。
SharePoint アドイン廃止に向けてどう準備すればいい?移行の進め方を解説!
SharePoint アドインの廃止に備えるためには、計画的で段階的なアプローチが必要です。企業の規模や利用状況に応じて、適切な移行戦略を立てることが成功の鍵となります。
移行プロジェクトは単なる技術的な変更ではなく、業務プロセスの見直しや組織全体での意識改革を伴う重要な取り組みとして位置づける必要があります。
まずは今の状況を整理しよう
移行準備の第一歩は、現在のアドイン利用状況の全容把握です。IT 部門は、すべての SharePoint サイトとアプリカタログを調査し、導入されているアドインのリストを作成する必要があります。この調査では、アドインの種類、利用部署、業務への影響度、開発者情報、ライセンス状況などを詳細に記録します。
特に重要なのは、各アドインが実現しているビジネス機能の重要度評価です。売上に直結する業務、法的要件を満たすための機能、日常業務で頻繁に使用される機能などを優先順位付けし、移行計画の基礎とします。また、カスタム開発されたアドインについては、ソースコードの有無、開発者の在籍状況、技術文書の整備状況も確認が必要です。
移行のスケジュールと進め方のコツ
効果的な移行を実現するためには、2026 年 4 月の廃止期限から逆算した詳細なスケジュールを策定する必要があります。移行作業は通常、設計・開発・テスト・本格運用の各フェーズに分かれるため、十分な時間的余裕を確保することが重要です。
まず、重要度の高いアドインから段階的に移行を進めます。SPFx への移行が困難なアドインについては、代替技術の検討や業務プロセスの見直しも並行して実施します。パイロットプロジェクトを実施して移行手法を確立し、その後本格的な移行作業に展開するアプローチが効果的です。
移行作業では、開発チームのスキル向上も重要な要素です。従来の.NET 開発とは異なり、SPFx はJavaScript / TypeScript、React、Node.js などの技術が必要になるため、事前の技術習得時間を計画に組み込む必要があります。また、外部の専門ベンダーとの協力も検討し、プロジェクトの成功確率を高めることを推奨します。
SharePoint の移行・保守はSGプラスにお任せ!
SharePoint アドインの廃止は、多くの企業にとって大きな課題となります。移行作業は技術的にも業務的にも複雑で、専門的な知識や経験が欠かせません。だからこそ、信頼できるパートナーと一緒に進めることが成功のポイントです。
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